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小さなギモン調べてみました!

建築・不動産から言葉のトリビアまで、仕事の中で見聞きした小さなギモンを調べて報告していきます。

なぜ「百選」?

コロナ禍のニュースを見るにつれ、
最近特に違和感を感じているのが、
感染者の人数を伝える話題。

「ついに100人を超えました」
「全国で3万人です」
って、ニュースで言いますけど、じゃぁ、
「99人なら少ないの?」
「29,999人なら安心なの?」
って、思ってしまうんですよね。

なんとなく、「キリの良い数字」になると、
「すごい」と感じてしまう感覚・・・。
増加の「実数」よりも、「桁が変わる」事の方に、
重点が置かれている感じ・・・。

報道的には、その方が伝わりやすいし、
私のようなひねくれ者以外には、
理解されやすいからなんでしょうけど、
そもそもの基準がわからないままに、
他人が言う表面上の数字だけで、
「量感」を判断できるものでもないと、
個人的には思ったりします。


で、思ったのですが、
「キリ」や「桁」で、
理解しやすくするのも必要ではあるかもしれませんが、
「分母」を、提示するのも重要なんじゃないかな、と。

単に「100人です」と言われても、
「1億2千万人の中の100人です」と、
「300人の中の100人」では、
相当意味合いが変わってくるじゃないですか。


と、ここまでのモヤ~っとした思いがあって、
そこで、ふと、思い当たったのが、今回の話題、

「百選」って、色々あるけど、なぜ「百選」?

というギモンです。
世の中に、「ベスト100」的なものってたくさんあるけど、
いったい、分母がいくつの中の「100」なのか?
なんで、「十」でもなく「千」でもなく、
「百選」にしたんだろう、と。





調べてみると、やはり整理している人はいて、
とあるサイトでは、日本国内だけで、
172の何らかの「百選」をデータベース化しているサイトがありました。

Wiki様に名前が出ていたものは、日本国内の物だけで191、
世界全体でのいわゆる「ベスト100」的なものも入れれば、
ざっと見ても、200を超えます。
おそらく、よりローカルだったり、マニアックだったりするものも含めれば、
日本国内だけでも数百はあるんじゃないでしょうか?

それこそ『「日本国内百選」百選』だってできそうです。

こんなにあるという事は、思うに、
そもそも日本人は、「百選」が好きなんですね。たぶん。
考えてみればあの「百人一首」だって、「百選」ですから。



・・・そうか!
もしかしてこの「百人一首」が、
日本最古、もしくは世界最古の「百選」なのでは?!
と思って、「百選」そのものの歴史を調べてみたのですが、
少なくともネット上では調べきれませんでした。

わかったことと言えば、
・(小倉)百人一首の成立は13世紀ごろ
・会社にあった1986年改定の旺文社国語辞典には、
 そもそも「百選」という言葉が載っていない。
・この辞書に寄れば、「百」という言葉には、
 数字としての意味以外に「数が非常に多い事、様々、諸々」
 の意味がある。
ぐらい。

と、ここで、思い当たるわけです。
「元は、『100』集めることが目的ではなく、
 たくさん集めることが目的だったのでは?」、と。

「百貨店」とか「百発百中」とか「百獣の王」とかの「百」って、
具体数の「100」ではなくて、「たくさん」の意味ですもんね。

百人一首も「100人」目標と言うより、「たくさん集める」ことが目標で、
たくさん集めた結果が、実際に「100人」になったという事もあるのかも。

江戸時代のベストセラー本「豆腐百珍」あたりになると、
「豆腐料理がたくさん載ってるぞ!」と「たくさん」を強調するために
無理矢理でも「百」にしたりしたのかも。

で、「百」までは頑張れたけど、
同様に「多数」の意味があったとしても、
さすがに「千」や「万」は無理だった、と。
「多数」の意味を持ちながら「実数」として事例を挙げるのは、
「百」ぐらいが限界だったってことなのかも。



で、、現代の「百選」の方ですが、
明治以降で、ある程度公共性があるもので、一番古いのは、
私が見つけた中では、
1927年(昭和2年)に大阪毎日新聞社・東京日日新聞社主催で選定された、
「日本百景」のようです。

日本を代表するような百の景勝地を選出したもので、
ちなみに、宮城県からは、
石巻海岸
気仙沼湾
青根温泉
の3か所が入っていますが、
「アレ?入ってないの?」と思ったでしょ。

実は、この「日本百景」はベスト100じゃないのです。
1927年に行われたのは「日本新八景」を決めるイベントで、
山岳、渓谷、瀑布、温泉、湖沼、河川、海岸、平原の
八部門のそれぞれトップを決めるものでした。
一般からハガキによる応募を募り、その上位から審査員が決める方式。
応募総数は約9,300万通で、当時の日本の人口の約1.5倍。

この中から選ばれたそれぞれのTOPが「日本新八景」となり、
選に漏れた中での次点的なものが、「日本二十五景勝」とされ、
さらにここまでにも入らなったけど、いいセンいってるゼ、的だったものが、
「日本百景」となってる上、
そもそも「日本三景」と「富士山」は別格なので、審査対象外だったのです。
つまり「松島」は別格扱いなので、「百景」に入っていないのです。


ということで、「日本百景」に選ばれているものに、あえて順位をつければ、
「富士山」「日本三景」の別格4つがあって、「日本新八景」があって、
「日本二十五景勝」まで入れた、上位合計37景の後の
第38位~第137位までになるというわけです。

話しが逸れました。時を戻そう。


続いて、「百選」という言葉自体が登場してしたのは、
1950年(昭和25年)に毎日新聞社が主催して選定された
「新日本観光地百選」っぽいです。

「交通機関の終着点から徒歩1時間以内」という条件で、
これまた、ハガキによる応募で、約7,750万票の応募があったらしいですが、
組織票もかなりあったとの事。
ちなみにTOPは「蔵王山」で、これで「蔵王」が有名になったために、
近くにあった町や村、温泉や駅名までも、あやかって「蔵王」になったらしいです。
(それまでは別の名前だったんですけど)


この二例を見ただけでも、
日本人が「百選」を選ぶこと、選ばれることに、
かなりアツイ国民なんだな、とも感じます。

そして、「百選」が更に広く、完全に認知されたのは、
1985年(昭和60年)に環境省(当時は環境庁)が、
全国各地の「名水」とされる湧水・河川(用水)・地下水を
100か所選んだ「名水百選」ではないでしょうか?


当時は、水道水がおいしくないといいうイメージがあり、
その意味でも、この「百選」は注目されたのかもしれません。
「六甲のおいしい水」が発売されたのも、選定の少し前の1983年の事ですし。

日本には、それこそ各地に無数の"名水"がありますから、
「ベスト100」に入れば、かなり優越感もありそうな感じもします。

実際、2008年(平成20年)には新たに「平成の名水百選」
も選定されて、しかも先の百選とはひとつも重なっていないので、
この時点で合計「二百選」になってしまったくらいですし。


「百選」が、
「ベスト100」とは限らない、
「たくさん」の意味で選定、収集している、
という観点だとすれば、
「百選」においては、
前述の「分母」の部分は、あまり関係ないんでしょうし、
そもそも「100」である事も最重要ではないのかもしれませんね。


現に、
「日本の道100選」104ありますし、
「歴史の道百選」114が選ばれています。


下の画像は、岩手県の一ノ関駅前にあった
「日本の道100選」の案内板。
「芭蕉行脚の道」の代表として、ここの通りが
選定されたんだそうです。
奥の細道.jpg

「おくのほそ道」って名乗っちゃってますけど、
「おくのほそ道」って、特定の道の名前じゃなく、書籍名ですし、
あえて言えば、全行程約600里(2400km)全体が「おくのほそ道」でしょうし、
そもそもの選定も「芭蕉行脚の道」なのに、いいんでしょうか?


・・・こうしてみてくると、「百選」って、
個別に細かく見ていけば、
選ぶ方、選ばれる方、双方の
様々な苦労や熱意、思い込みが見え隠れするモノなのかもしれないですね。


※文中の考察は全て個人の見解です。なんら学術的な根拠はありません。

この記事を書いた人

斉藤 一則

斉藤 一則(株式会社マイザ)

事業企画担当。
遊休地や低利用建物の効率化提案から賃貸管理・リフォームサポートまで、建築・不動産関係が専門。
旅行好き。

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