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マクロの眼

プロジェクトエンジニアを僭称(?)中

学生の街づくり物語#2

(前回のあらすじ)

大学学部時代に恩師より、再開発を考える際には「場所性」、すなわちこれまでの歴史とこれからの未来を見据えた時間軸と、その都市に必要な機能軸の二つの視点から考えよ、と教えられたカサマ。そして実習で「壱弐参横丁の再開発プラン」を立てるという課題をゼミで出されたのですが、さて・・・。
・・・
フィールドワークに入って早々、「こりゃ、このまま維持する方法を考えた方がよい」という意見が大勢となりました。先生も「ほら、この店いいでしょう!たぶんこのどんぶり20年ぐらい使ってるね!」と紹介する。当時二十歳そこそこの若者にとって横丁空間は、まるで映画のセットの中を歩くようなエキサイティングで魅力的な経験だったのです。ところが、それでも「敢えて」、隣の丸善(当時)、小学校を含めた、大規模な再開発が課題として与えられました。当時既に「ハコモノ」という言葉自体にネガティブなイメージがつきまとう時代でしたが、「ハコモノ」が規定する街の機能の可能性を我々は信じることにしたのです。
そして非常に悩みながら、私が出したプランは超高層ビルに「超高級ホテル(当時はリッツカールトンをイメージしていた)」を入れるプラン。
一見すると仙台には「不相応」に思われるプランで、壱弐参横町の歴史を破壊しかねないプランしたが、場所性、収益性とも「ロジカル」であると、先生には高い評価を頂きました。いくつかのシミュレーションをしましたが、建物の収益性を出そうとするとよほど何か「別の価値」を生み出さないと、どうしてもあの場所は高層ビルしか収益上成り立たない。私の頭ではとうとうその「別の価値」をうまく考え出せなかったのでした。しかし、この訓練を期に学術的態度のベースである「仮説主義」と「計量分析主義」を強烈に認識し、10年後に進学した大学院で再び植えつけられ、その正しさを認識しました。
あれから10年。
「まさか」の、21世紀になっても「壱弐参横町」は残り、学院高校跡の超高層ビルには高級ホテル「ウェスティン」が都市の「機能」として生まれました。結果的には、都市にとって不可欠な二つの機能が存在し、ある意味ベストなカタチで新しい世紀を迎えたのかもしれません。河原町の自宅から広瀬川越しにトラストシティのビルを望むたび、まさに「現実は小説よりも奇なり」を感じるのでした。(了)
DSC_4942雨の虎横.JPG
写真は雨の日の「虎横」。雨の日は普段見ない街の姿を発見出来るので、意外に好きです。

この記事を書いた人

笠間 建

笠間建 (コミューナ・トランスレーション・デザイン有限責任事業組合)

事業連携担当。
プロジェクトエンジニアを僭称(?)中。PEは本来は工場オペレーション用語ですが、調査分析・事業企画・計画・実行など、プロジェクト全般を広義に「エンジニアリング」してきたキャリアパスで、他に良い表現が見つからないので。2008年9月から2010年8月まで、社会人学生として東京で貧乏大学院生生活を送っていましたが、2010年9月に無事修了して仙台に戻ってきました。
趣味は自転車、旅行、写真。

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