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マクロの眼

プロジェクトエンジニアを僭称(?)中

2010年11月のアーカイブ

(前回のあらすじ)

大学学部時代に恩師より、再開発を考える際には「場所性」、すなわちこれまでの歴史とこれからの未来を見据えた時間軸と、その都市に必要な機能軸の二つの視点から考えよ、と教えられたカサマ。そして実習で「壱弐参横丁の再開発プラン」を立てるという課題をゼミで出されたのですが、さて・・・。
・・・
フィールドワークに入って早々、「こりゃ、このまま維持する方法を考えた方がよい」という意見が大勢となりました。先生も「ほら、この店いいでしょう!たぶんこのどんぶり20年ぐらい使ってるね!」と紹介する。当時二十歳そこそこの若者にとって横丁空間は、まるで映画のセットの中を歩くようなエキサイティングで魅力的な経験だったのです。ところが、それでも「敢えて」、隣の丸善(当時)、小学校を含めた、大規模な再開発が課題として与えられました。当時既に「ハコモノ」という言葉自体にネガティブなイメージがつきまとう時代でしたが、「ハコモノ」が規定する街の機能の可能性を我々は信じることにしたのです。
そして非常に悩みながら、私が出したプランは超高層ビルに「超高級ホテル(当時はリッツカールトンをイメージしていた)」を入れるプラン。
一見すると仙台には「不相応」に思われるプランで、壱弐参横町の歴史を破壊しかねないプランしたが、場所性、収益性とも「ロジカル」であると、先生には高い評価を頂きました。いくつかのシミュレーションをしましたが、建物の収益性を出そうとするとよほど何か「別の価値」を生み出さないと、どうしてもあの場所は高層ビルしか収益上成り立たない。私の頭ではとうとうその「別の価値」をうまく考え出せなかったのでした。しかし、この訓練を期に学術的態度のベースである「仮説主義」と「計量分析主義」を強烈に認識し、10年後に進学した大学院で再び植えつけられ、その正しさを認識しました。
あれから10年。
「まさか」の、21世紀になっても「壱弐参横町」は残り、学院高校跡の超高層ビルには高級ホテル「ウェスティン」が都市の「機能」として生まれました。結果的には、都市にとって不可欠な二つの機能が存在し、ある意味ベストなカタチで新しい世紀を迎えたのかもしれません。河原町の自宅から広瀬川越しにトラストシティのビルを望むたび、まさに「現実は小説よりも奇なり」を感じるのでした。(了)
DSC_4942雨の虎横.JPG
写真は雨の日の「虎横」。雨の日は普段見ない街の姿を発見出来るので、意外に好きです。

初めまして!

 
さて、商店街活性化や再開発などの案件に、若手の大学研究者や学生などが何かしらの形で関わるのは、全国的に見られる「良くある話」だと思います。
 
かく言うカサマも10年以上前に宮城大学事業構想学部事業計画学科の学生時代に所属した、宮原博通先生(現(有)地域環境デザイン研究所所長)の事業開発ゼミ、通称「宮原ゼミ」で、市内の様々な再開発案件のフィールドワークを行った経験があります。
宮原先生は、「141(現三越定禅寺通り館)」の再開発のプロデュースに関わった方で、フィールドワークも再開発案件が多かったのです。
 
ゼミ関連の名物授業の一つが、実際の再開発が予想される街の一角を調査し、再開発プランを立てるという実習。
先生は一級建築士なのですが、建物のデザインなどの類の話ではなく、実際の地価をベースに建物の総コストを決定し、建物自体の期待収益性をはじき出して、フロア面積当たりの収益性を基礎にテナント設計を行うような、いわゆる「事業開発」的なところが課題です。その過程で建築基準法や2方向避難の原則、通路の広さのバランスなど、様々な問題を認識し、必要な知識を吸収するわけです。
 
たとえば、あまり外装にお金をかけすぎると建物のコストが上がり、1平方メートル当たりの必要な収益性が高騰してテナントの柔軟性が無くなり、圧縮陳列するか逆に高級品しか置けない、などなど。
 
表計算ソフトを駆使して、そうした建築コストや収益性を計算するのは意外に「はまる」楽しい作業なのですが、宮原先生から言われたのは「場所性」という概念を常に意識しなければならないということでした。
 
すなわち、そこにそれまで存在している「歴史」を見つめ、都市全体の中で必要な「機能」を常に意識する視点を持つことを強調されていました。「機能」軸と、「時間」軸の二つを常に持つということです。
 
そして私の代で出された課題が、奇しくも「壱弐参横町界隈の再開発」だったのです。
 
(つづく・・・)

DSC_4947ss.JPG

 

写真は往時の「連鎖街」。
フィールドワークの際には、他の横町や他都市の商店街なども結構回りました。また、当時高額だった「デジカメ」を、フィールドワーク調査用に買うよう大学の先生方から指示されていましたが、それがカサマの本格的な写真生活の始まるきっかけとなりました。
今後もこのblogで少しずつ写真を貼っていきますので、よろしくお願いします!

この記事を書いた人

笠間 建

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